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コンプライアンスと労務管理(3)

前回は、労働者(従業員)の会社に対する意識が変化してきていること、労働条件を守るよう会社に要求する権利意識が確実に高まっていることをお話しました。

経営サイドはというと、労働者の意識が変ってきていることを認識していない経営者がまだまだ多いようです。労務管理でわかりやすい法令違反の例はサービス残業でしょう。
「法令を守ってやっていたら収益がでない、その通りにはやっていられない」という本音が優先し、コンプライアンス(法令遵守)の意識がおろそかになり、その結果 として大きなリスクをかかえてしまうのです。

ハーツバーグ(Herzberg Frederic)の「動機付け要因と衛生要因」という理論があります。
「動機付け要因」とは、満足、モチベーション、ヤル気を高める要因のことです。つまりこれが満たされるほどヤル気が高まるということです。この場合、満足の対極は不満足ではなく没満足となります。要因動機付け要因には(達成・承認・仕事そのもの・責任・昇進・成長)があげられます。
「衛生要因」とは、それが足りないと不満に感じる、ヤル気が起こらなくなる要因のことです。しかし充分に満たされてもヤル気を高める要因には長期的にはなりません。この場合不満足の対極は満足ではなく、没不満足となります。衛生要因には(会社の政策と管理・監督・監督者との関係・作業条件・給与)がはいります。

つまり、人がモチベーションを高める要素と、不満を高める要素とは違うというのがこの理論のポイントです。
「動機付け要因」と「衛生要因」は車の両輪のようなものです。これをうまく組み合わせることでモチベーションの向上を持続させ、労働生産性が高まっていくのです。
この理論でさきほどのサービス残業を考えてみると、「衛生要因」の(会社の政策と管理・作業条件・給与)に当てはまることがわかります。「衛生要因」の要素の3つに該当します。いかにサービス残業が従業員の不満を増大させ、ヤル気を失わせているかがわかります。

現在は従業員個人個人の権利意識が高まっているのです。従業員の不満・苦情の声に対応しない結果 として、企業と従業員とのトラブル(個別労働紛争)・有能な人材の流出・忠誠心、モチベーションの更なる低下・内部告発などが発生してきます。リスクが現実化してしまうのです。
情報技術が発達している現在では、このような情報はまたたく間に社会全体に広がります。企業活動の公正さに対する社会の目は厳しくなってきています。ひとたび広まると、状況によっては企業不祥事として社会的批判にさらされ、長年にわたり築き上げてきた信用・ブランドが崩壊し、経営不振や倒産という最悪のシナリオになります。

以上をまとめると、次のようになります。
1. 労務管理に関するコンプライアンス(法令遵守)を行なうということはハーツバーグの「動機付け要因と衛生要因」のうち「衛生要因」に作用すること。
2. 「衛生要因」の向上により、従業員の不満・ヤル気の低下をおさえること。
3. 「動機付け要因」と「衛生要因」をうまく組み合わせることによって、モチベーションを向上させ、不満を取り除き、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」の4大要素のうち「ヒト」資源の質を高め、企業の生産性を向上させること。
4. 企業活動の公正性が向上し社会的評価が高まり、優秀な人材が集めやすくなること。
5. 「衛生要因」を向上させないと「ヒト」資源の劣化がおこり、企業にとって重大なトラブルにつながりやすいこと。

ハーツバーグ (Herzberg Frederic)
1923年生まれ アメリカ ウェスタン・リザーブ大学心理学教授
大阪事務所・鮫島真司

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